年金制度改正法成立
 社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案(年金制度改正法案)が6月13日に参議院本会議で可決・成立されました。
当初3月国会提出とも言われていた改正法案ですが、改正の中心となる基礎年金(国民年金)を厚生年金の積立金を活用して底上げを図ることに自民党から懸念の声が上がり、国会上程が2か月近く遅れるとともにこの部分は法案から削除され、5月16日に国会に上程されました。その後、衆議院で審議が始まり、5月30日に修正の上、可決され参議院に送られ、1カ月弱というスピード成立の運びとなりました。

 改正法は、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を図る観点から、働き方や男女の差等に中立的で、ライフスタイルや家族構成等の多様化を踏まえた年金制度を構築するとともに、所得再分配機能の強化や私的年金制度の拡充等により高齢期における生活の安定を図るため、国民年金法や厚生年金保険法の一部改正等を一つにまとめたもの。

 具体的な改正項目をみると、被用者保険の適用拡大に向けて「年収106万円の壁」と言われる賃金要件が撤廃されました。年収106万円の壁とは、会社員の配偶者などで一定の収入がない被扶養者(第三号被保険者)等がパートやアルバイトとして働き、その収入が一定額を超えると社会保険料負担が発生し手取り収入が減少するため、この手取り収入が減らないように年収を抑える金額のボーダーライン。月額8万8千円とされるこの賃金要件が改正法公布から3年以内に撤廃。また従業員51人以上である企業規模要件を令和9年10月から段階的に緩和(令和17年10月撤廃)されます。

 また、働きながら(厚生年金加入のまま)老齢厚生年金を受給している労働者の収入月額が支給停止調整額を上回ると厚生年金が減額され、働き損になると指摘されている「在職老齢年金」について、シニア世代の就労促進を図る観点等から、令和8年度より減額開始基準を月額50万円から62万円に引き上げられます。これにより、人手不足の解消と健康寿命が伸びる中で労働意欲の阻害感の改善が期待されています。

 その他、標準報酬月額の上限の段階的引上げや、遺族厚生年金について現役世代で子どもがいない人が受け取る際の要件の男女差の解消なども含まれています。